領収書の書き方ガイド
PDF領収書の有効性・収入印紙・但し書き
この記事の要点
- 領収書は金銭を受け取った側が発行する。支払人には民法上の交付請求権がある
- 紙は記載金額に応じた収入印紙が要る。PDFで発行すれば印紙税はかからない
- 宛名の「上様」と但し書きの「お品代」は、経費否認のリスクを招く
1. 領収書の役割
領収書は、金銭を受け取った事実を証明するために受取人が発行する書類です。民法第486条により、支払った側には交付を請求する権利があります。
役割は4つです。二重請求の防止、経費計上の裏付け、帳簿との整合の根拠、そして税務調査での立証。いずれも「支払いが実在したこと」を示す証拠として働きます。
印紙税法上は「第17号の1文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)」に当たります。紙で発行するなら収入印紙の判断が必要になります。
2. どこに何を書くか
一つでも欠けると税務調査で経費として認められないことがあります。実際の出力例で位置ごとに確認します。
- 1
書類名
「領収書」と明記します。「受領書」でも有効ですが、取引の性質が伝わる表記を選びます。
- 2
領収日
金銭を実際に受け取った日。売掛金なら入金確認日、現金払いなら受領日を書きます。
- 3
領収書番号
法定項目ではありませんが、連番にすると二重発行の防止と照合が容易になります。
- 4
領収金額(税込)
改ざん防止のため「金」「¥」で始め「也」「-」で閉じ、3桁ごとに区切ります。
- 5
但し書き
何に対する支払いかを書きます。勘定科目が判断できる粒度が基準です。
- 6
宛名
支払った法人・個人の正式名称。「上様」は経費否認のリスクがあります。
- 7
発行元と登録番号
名称・住所・連絡先に加え、適格請求書発行事業者の登録番号を記載します。
- 8
税率区分別の内訳
税抜額・消費税額・税込合計を分けます。印紙税の判定にも効きます。
3. 収入印紙の要否と金額
紙で発行する領収書には、記載金額に応じた収入印紙を貼り、消印(割印)を行います。主要な区分は次のとおりです。
| 記載金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 5万円未満 | 非課税(不要) |
| 5万円以上 100万円以下 | 200円 |
| 100万円超 200万円以下 | 400円 |
| 200万円超 300万円以下 | 600円 |
| 300万円超 500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超 1,000万円以下 | 2,000円 |
| 1,000万円超 2,000万円以下 | 4,000円 |
| 2,000万円超 3,000万円以下 | 6,000円 |
| 3,000万円超 5,000万円以下 | 10,000円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 20,000円 |
| 金額の記載のないもの | 200円 |
1億円超の区分は金額帯ごとにさらに上がります。該当する場合は国税庁の印紙税額一覧で確認してください。
消費税額を区分記載していれば、印紙税の判定は税抜金額で行います。税込52,800円(税抜48,000円)なら5万円未満となり非課税です。区分記載にはこの実利があります。
「営業に関しない受取書」は非課税です。ただし個人事業主が事業として発行する領収書は営業に関する受取書に当たり、課税対象になります。
貼り忘れると本来の印紙税額の3倍(自主申告なら1.1倍)の過怠税が課されます。消印を忘れた場合も額面と同額が課されます。ただし領収書自体の法的有効性は失われません。
4. 但し書きの書き方
但し書きは「何に対する支払いか」を示します。ここが曖昧だと勘定科目を決められず、税務調査で事業関連性を説明できません。
「お品代」「商品代」だけの記載は、科目不明・事業関連性の不証明・経費否認・軽減税率の判定不能という4つのリスクを同時に抱えます。
| 場面 | 記載例 |
|---|---|
| 飲食費 | 但し、飲食代(会議費)として/但し、接待飲食代として |
| 交通費 | 但し、タクシー代として/但し、宿泊代として |
| 物品購入 | 但し、事務用品代として/但し、パソコン周辺機器代として |
| サービス | 但し、Webサイト制作費として/但し、コンサルティング料として |
| 工事・修繕 | 但し、事務所内装工事代として/但し、空調設備修繕費として |
| 会費・参加費 | 但し、〇〇セミナー参加費として/但し、年会費として |
同じ「飲食代」でも、取引先との会食は交際費、社内会議の弁当は会議費、従業員の慰労は福利厚生費と科目が変わります。目的を一言添えると先方の経理が迷いません。
複数の品目が含まれるときは主要なものを書いて「他」と付記します。科目が異なる品目が混ざる場合は、領収書を分けて発行するほうが確実です。
5. PDF発行と電子保存
PDFで発行した領収書は法的に有効です。前述のとおり収入印紙も不要で、紙の領収書と同等の証憑として扱えます。
一方で保存側の要件があります。2024年1月から電子取引データの電子保存が完全義務化され、PDFで受け取った領収書は電子データのまま保存します。
要件は3つです。真実性の確保(タイムスタンプ、または訂正・削除の履歴が残るシステム)、検索性の確保(取引年月日・金額・取引先で検索できる)、見読性の確保(速やかに画面表示・出力できる)。
メール送付時は、送信履歴で送付日を残し、ファイル名を「領収書_20260731_株式会社〇〇.pdf」のように日付と取引先が分かる形にすると管理が楽になります。送信先の確認も忘れずに。
保存ルールの詳細は電子帳簿保存法の解説にまとめています。
6. 再発行の扱い
再発行は二重発行のリスクを伴います。同一の支払いに2枚の領収書が存在すると経費の二重計上に悪用され、発行者側も責任を問われることがあります。
再発行するときは次の5点を守ります。
- 「再発行」と明記する(赤字またはスタンプ)
- 発行日は再発行日とし、元の発行日は備考へ残す
- 再発行が必要な理由を依頼者に確認して記録する
- 紛失以外なら元の領収書を回収して廃棄する
- いつ・誰に・なぜ再発行したかを社内へ保管する
再発行した紙の領収書にも収入印紙は必要です。再発行だから非課税になることはありません。PDFで再発行すれば印紙税はかかりません。
発行者側も控えを保管します。保存期間は法人・個人事業主とも原則7年です。控えがあれば不正な再発行依頼を見抜けます。
7. インボイス制度と領収書
小売業・飲食店業・写真業・旅行業・タクシー業・駐車場業など、不特定多数を相手にする事業では、記載要件を簡略化した「適格簡易請求書(簡易インボイス)」を発行できます。
| 項目 | 通常のインボイス | 簡易インボイス |
|---|---|---|
| 宛名 | 必須 | 省略できる |
| 税率ごとの消費税額 | 必須 | 消費税額または適用税率のどちらか |
| 登録番号 | 必須 | 必須 |
| 取引年月日・取引内容 | 必須 | 必須 |
企業間取引の領収書をインボイスとして機能させるなら、登録番号を記載し、消費税額を税率ごとに区分します。簡易インボイスの対象業種でなければ宛名も必要です。
制度の全体像はインボイス制度の解説を参照してください。記載項目を確認したら、そのまま領収書作成フォームで作成できます。
一次情報の出典
参考情報と更新方針
最終確認日: 2026-04-12
紙と電子で保存ルールが異なるため、受領方法と保管方法をセットで確認してください。
参考にしている公的情報
- 国税庁 公式サイト - 税制・申告・保存要件の公式情報
- e-Tax 公式サイト - 電子申告・電子保存に関する案内
- e-Gov法令検索 - 法令の原文確認に利用できる公的データベース
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