返品伝票(返品書)の書き方ガイド
赤伝との違い・返還インボイス・下請法の注意
この記事の要点
- 返品伝票の本体は「どの伝票の、どの品を、なぜ返すか」の3点
- 元の納品書・請求書の番号を書かないと、相手は突き合わせができない
- 返送料の負担者を書かないと、後から必ず費用の押し付け合いになる
1. 返品伝票とは何か
返品伝票は、いったん納品された商品を返すときに、その事実と対象・数量・金額を記録する書類です。返品書、赤伝とも呼ばれます。
役割は 2 つあります。ひとつは在庫と受領記録を戻すこと。もうひとつは、すでに立った売上と請求を打ち消す根拠を残すことです。
発行するのは返品する側(買った側)が基本です。ただし商習慣によっては、返品を受けた売り手が控除の根拠として起こすこともあります。どちらでも構いませんが、同じ返品に両方から伝票が出ると二重計上になります。
2. 赤伝・返品書・返品伝票の呼び分け
呼び名が複数あるのは、由来が違うためです。書類としての効力に差はありません。
| 呼び名 | 由来 | よく使う場面 |
|---|---|---|
| 返品伝票 | 伝票処理の一種としての名称 | 流通・小売の日次処理 |
| 返品書 | 書類としての名称 | 製造・BtoB の個別取引 |
| 赤伝(赤伝票) | マイナス計上を赤字で書いた慣習 | 会計・販売管理システムの用語 |
赤伝という言い方は、売上を取り消す方向の伝票全般を指します。返品だけでなく、値引きや単価訂正でも赤伝と呼ぶ現場があるため、相手が何を指しているかは確認したほうが安全です。
反対に売上を追加する方向は黒伝と呼ばれます。返品ではなく数量の不足を後から追加する場合はこちらで、返品伝票を使う場面ではありません。
3. どこに何を書くか
法定の様式はありません。ただし元の取引を特定できない返品伝票は、受け取った側で処理できません。実際の出力例で位置を確認します。
- 1
書類名と赤伝表示
「返品書」と明示し、売上を取り消す方向であることが一目で分かる表示を添えます。
- 2
返品書番号
自社の採番です。控えと在庫の戻し処理を突き合わせる手がかりになります。
- 3
返品理由
不良品・数量違い・仕様相違などを短く書きます。後述の下請法の判断にも効きます。
- 4
参照する元の伝票
納品書番号・請求書番号・元伝票番号。ここが空だと相手はどの取引か特定できません。
- 5
返送料の負担
自社負担か相手負担かを明示します。書かないと後から費用の押し付け合いになります。
- 6
返品内容
品名・数量・単価・税率を元の納品書と同じ表記で並べます。理由の詳細は括弧で添えます。
- 7
返品合計
取り消す金額です。元の請求書と同じ税率で計算し、税率ごとの区分も保ちます。
- 8
備考
代替品の要否や引き取り方法など、相手が次に取る行動を書きます。
4. 消費税と返還インボイス
返品を受けた売り手の側では、いったん立てた売上の一部を戻すことになります。消費税ではこれを「売上に係る対価の返還等」として扱います。
適格請求書発行事業者が対価の返還等を行うときは、原則として適格返還請求書(返還インボイス)を交付します。返品伝票にその記載事項を持たせれば、1 枚で兼ねられます。
必要になるのは、発行者の名称と登録番号、返還の対象となった取引の年月日、取引内容、税率ごとに区分した返還金額、税率ごとの消費税額または適用税率です。
免除に当てはまる場合でも、返品伝票そのものは残してください。交付義務がないことと、社内で記録を残さなくてよいことは別の話です。
制度の全体像はインボイス制度のガイドにまとめています。
5. クレジットノートとの使い分け
金額を戻す書類にはクレジットノート(貸方票)もあります。返品伝票と役割が重なるため、どちらを出すか迷う場面が出てきます。
| 観点 | 返品伝票 | クレジットノート |
|---|---|---|
| 戻すもの | モノと金額の両方 | 金額だけ |
| 典型的な場面 | 不良品・誤納品の返送 | 値引き・数量誤請求の訂正 |
| 在庫への影響 | あり(受入を取り消す) | なし |
モノが動くなら返品伝票、金額だけを直すならクレジットノートと覚えると迷いません。返品したうえで請求も訂正する場合は、両方を発行して番号で相互参照させます。
クレジットノート側の書き方はクレジットノートのガイドを参照してください。
6. 下請法で返品が禁止される場面
返品は当事者の合意があれば自由にできる、とは限りません。下請取引に当たる場合、発注側からの返品は法律で制限されています。
下請代金支払遅延等防止法は、下請事業者に責任がないのに給付を受領した物を引き取らせる行為を禁止しています。不良品でないのに在庫調整で返す、といった扱いが典型です。
だからこそ返品理由の記載が効きます。「不良品」「仕様相違」と具体的に書いた伝票が残っていれば、正当な返品であることを後から示せます。理由を空欄にした伝票は、その証拠を自分で捨てているのと同じです。
7. 返品の実務フロー
返品は書類だけでは終わりません。モノの移動、金額の訂正、在庫の戻しが同時に走るため、順番を固定しておくと取りこぼしが減ります。
事実の確認
数量・状態・元の納品書を特定する
返品の合意
理由と返送料の負担を相手と決める
返品伝票の発行
元伝票番号と理由を記載して送る
返送と受領
モノを戻し、受領の記録を残す
金額の精算
請求訂正または次回請求で相殺する
5 番目で次回請求から差し引く運用にするなら、請求書の備考へ返品書番号を書いてください。番号がないと、入金時に金額が合わない原因を追えなくなります。
返品伝票は返品書の作成フォームから作成できます。参照する納品書番号・請求書番号・元伝票番号と返送料の負担者を入力欄として持ち、そのまま PDF として出力できます。
一次情報の出典
参考情報と更新方針
最終確認日: 2026-09-11
返還インボイスの交付義務や下請法の返品禁止に当たるかは、取引の内容・当事者の規模・返品の理由で変わります。判断に迷う場合は税理士または公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口へご確認ください。
参考にしている公的情報
- 国税庁 公式サイト - 税制・申告・保存要件の公式情報
- 適格請求書発行事業者公表サイト - 登録番号の確認に利用できる公式サイト
- e-Gov法令検索 - 法令の原文確認に利用できる公的データベース
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