督促状の書き方ガイド
未収金回収・遅延損害金・内容証明の進め方
1. 督促状とは|催告書との違い
督促状は、支払期日を過ぎても入金が確認できない未収金について、取引先に支払いを促すための書面です。 単なるリマインドのメールと違い、「いつの請求が、いくら、いつまでに未払いか」を文書で明確にし、 後の交渉や法的手続きの証跡として残せる点に意味があります。回収は「早く・段階的に・記録を残しながら」が原則で、 督促状はそのうち「記録を残す」フェーズの中心になる帳票です。
督促状とよく似た書面に「催告書」があります。両者に厳密な法律上の定義の差はありませんが、実務では 次のように使い分けるのが一般的です。督促段階が進み、最終局面で送るものほど書面の体裁が改まり、 内容証明郵便での送付を前提とします。
| 書面 | 位置づけ | 送付手段の例 |
|---|---|---|
| 督促状 | 支払いを促す通常の通知。1次・2次など複数回出すことが多い | メール添付・普通郵便・FAX |
| 催告書 | より強い支払いの意思表示。最終段階で法的手続きを予告することも | 内容証明郵便(配達証明付き) |
用語の整理: 裁判所を通じて行う「支払督促」(民事訴訟法に基づく手続き)は、ここで扱う督促状・催告書とは別物です。 督促状・催告書はあくまで当事者間の通知書面で、それ自体に強制力はありません。送付しても入金がない場合に、 支払督促・少額訴訟・通常訴訟などの法的手続きを検討する流れになります。
なお、本ガイドは EchoInvoice 編集部が実務フローと一次情報を照らし合わせて整理したもので、 個別の法的助言ではありません。金額が大きい、相手の対応が悪質といったケースでは、早めに弁護士や 各地の法テラス・中小企業庁の相談窓口などへ相談することをおすすめします。
2. 1次督促〜最終催告の段階別フロー
回収はいきなり強い文面を送るのではなく、相手の状況を確認しながら段階的にトーンを上げるのが実務的です。 1 通目から法的手続きをちらつかせると、単なる入金処理の遅れだった場合に取引関係を損ねます。 逆に、いつまでも柔らかい連絡を繰り返すと、時間だけが過ぎて時効が近づくリスクがあります。 次の 4 段階を目安に、各段階で「いつ・何を・どの手段で」送るかをあらかじめ決めておくと迷いません。
| 段階 | タイミングの目安 | 書面・トーン |
|---|---|---|
| 1次督促 | 期日超過後 数日〜1 週間 | 督促状(柔らかめ)。「行き違いでしたら申し訳ありません」を添える |
| 2次督促 | 1 次から 1〜2 週間後 | 督促状(再度)。新たな支払期限を明示し、遅延損害金に触れる |
| 最終催告 | 2 次から 1〜2 週間後 | 催告書。内容証明郵便で送付し、法的手続きの予告を記載 |
| 法的手続き | 最終催告の期限経過後 | 支払督促・少額訴訟・通常訴訟など。専門家への相談を検討 |
EchoInvoice の督促状エディタでは、督促段階を「1 次督促・2 次督促・最終催告」から選べます。 「最終催告」を選ぶと書類名が自動的に「催告書」へ切り替わり、本文も内容証明郵便を前提とした 改まった体裁になります。元請求書の番号・当初支払期日・未払金額を引き当てれば、各段階の書面を 記載漏れなく短時間で作成できます。
記録のコツ: 各段階で「送付日・送付手段・相手の反応」を必ず記録しておきましょう。後に法的手続きへ進む場合、 「いつ・どのように支払いを求めたか」が時系列で残っていると主張の裏付けになります。最終催告だけでなく、 1 次・2 次の控えも保管しておくのが安全です。
3. 督促状に必ず書く記載項目
督促状は「どの請求が未払いか」を一意に特定できることが最重要です。相手の経理担当者が、自社の支払台帳と 突き合わせてすぐ確認できるよう、元の請求情報を正確に転記します。次の項目が揃っていれば、督促状として 必要な情報は満たせます。
- 発行日・督促状(催告書)の番号
- 宛先(相手の会社名・担当部署)と差出人(自社名・連絡先)
- 元の請求書番号・請求日・当初の支払期日
- 未払金額(元本)と、遅延損害金を請求する場合はその金額・年率
- 新たな支払期限(いつまでに入金してほしいか)
- 振込先口座(行き違いを防ぐため改めて明記)
- 行き違いで既に入金済みの場合のお詫び・本状無視のお願い
- 段階に応じた次のアクション(最終催告では法的手続きの予告)
収入印紙について: 督促状・催告書は、金銭の受取書(領収書)のような印紙税法上の課税文書には該当しないため、 収入印紙は不要です。督促段階に関わらず、督促状そのものに印紙を貼る必要はありません。
4. 遅延損害金の年率・日割計算
支払期日を過ぎた金銭債務には、原則として遅延損害金(遅延利息)を請求できます。利率は、原則として 民法の法定利率によりますが、契約で定めた約定利率が法定利率を超える場合は、その約定利率によります(民法419条1項)。法定利率は 2020 年 4 月の 民法改正以降、年 3% を出発点とする変動制に統一されました(改正前にあった年 6% の商事法定利率は廃止)。 実際に適用される率は時期によって見直されるため、最終的な数値は e-Gov 法令検索などで確認してください。
例: 未払元本 300,000 円 / 年率 3% / 延滞 40 日 → 300,000 × 0.03 × 40 ÷ 365 ≈ 986 円
延滞日数は「当初の支払期日の翌日」から起算するのが一般的です。EchoInvoice の督促状エディタは、 当初支払期日と発行日から延滞日数を自動計算し、入力した年率で「未払元本 × 年率 × 延滞日数 ÷ 365」を 日割計算して遅延損害金を表示します。年率は任意入力で、請求しない場合は 0%(未記載)も選べます。
実務上の判断: 遅延損害金は「請求できる」ものであって「必ず請求しなければならない」ものではありません。 継続したい取引先には、1〜2 次督促では「遅延損害金が発生していますが今回は申し受けません」と 一言添えつつ、期日厳守を求めるやり方が現実的です。法定根拠のない高い利率を一方的に書くと、 かえって相手の反発を招くため、約定利率か法定利率の範囲にとどめましょう。
5. 内容証明郵便と時効の更新・完成猶予
最終催告では、内容証明郵便での送付が一般的です。内容証明郵便は「いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を 送ったか」を郵便局が証明する制度で、配達証明を付けると相手に到達した日も記録されます。これにより、 「催告した事実と日付」を後から客観的に示せるため、法的手続きへ進む際の重要な証跡になります。
回収で見落とされがちなのが「消滅時効」です。売掛金などの債権は、改正民法のもとで原則として 「権利を行使できることを知った時から 5 年」で時効により消滅し得ます。時効が完成すると、相手が時効を 主張した場合に請求が認められなくなるため、放置は禁物です。書面による「催告」を行うと、催告の時から 6 か月を経過するまでは時効の完成が猶予されます(民法 150 条)。ただし、催告による猶予は一度きりで、 猶予期間中に再度催告しても重ねて延長されない点に注意が必要です。
- 催告(書面での支払い請求)は、時効完成を 6 か月間猶予する効果を持ち得る(民法 150 条)
- 相手が支払いの一部を入金したり、債務を認める書面を出すと時効が「更新」される場合がある(民法 152 条)
- 確実に時効を更新するには、催告後 6 か月以内に訴訟提起などの法的手続きが必要になることが多い
- 時効が迫っている場合は、催告だけで安心せず早めに専門家へ相談する
注意: 時効の起算点・期間・更新の要件は、債権の種類や事情によって異なり、判断が難しい論点です。 ここでの説明は一般的な整理であり、個別ケースの結論を保証するものではありません。時効の完成が近い、 または完成しているおそれがある場合は、自己判断で放置せず、弁護士などへ相談してください。
6. 段階別の督促状・催告書 例文
段階ごとに文面の温度感を変えた例文です。いずれも「行き違い入金への配慮」を入れつつ、未払いの事実と 新たな支払期限を明確にしています。そのまま使うのではなく、自社の取引内容・関係性に合わせて調整してください。
実際の作成は督促状作成フォームが便利です。元の請求書から未払金額・当初支払期日を引き当て、督促段階を選ぶだけで、 上記のような書面を記載漏れなく PDF で出力できます。
7. 威迫にならない書き方の注意点
回収を急ぐあまり、相手を威圧する表現を使うと、かえってトラブルになります。正当な権利行使としての督促は 問題ありませんが、社会通念を超えた取立て行為は避けるべきです。次の点を押さえ、「事実と期限を淡々と示す」 文面を心がけましょう。
- 相手の人格を否定する表現や、脅迫と受け取られる文言は使わない
- 「法的手続き」の予告は、実際に検討する段階で、淡々と事実として書く
- 深夜・早朝の電話や、第三者への支払い要求など、不適切な取立ては行わない
- 事実と異なる金額・期日を書かない(誤記は信頼を損ね、争いの種になる)
- 遅延損害金は約定利率か法定利率の範囲にとどめ、法外な率を一方的に書かない
EchoInvoice の方針: 本ツールは督促状・催告書の文面テンプレートの提供にとどまり、個別の法的助言は行いません。 威迫的でない、正当な権利行使の範囲での予告にとどめた文面を採用しています。
8. 送付前チェックリスト
督促状は、送るたびに毎回ゼロから考えるよりも、固定のチェックリストを通す運用にすると記載漏れや 誤記が減ります。次の項目を送付前に確認しましょう。
- 元の請求書番号・請求日・当初支払期日が正確に転記されているか
- 未払金額(元本)が支払台帳と一致しているか
- 新たな支払期限が明示され、相手が対応できる余裕があるか
- 遅延損害金を請求する場合、年率と計算根拠が妥当か(請求しない旨も書けているか)
- 振込先口座を改めて記載し、行き違い入金への配慮文を添えているか
- 督促段階に合ったトーンになっているか(威迫的な表現がないか)
- 最終催告は内容証明郵便(配達証明付き)で送る準備ができているか
- 送付日・送付手段・控えを記録に残す段取りができているか
- 時効が近い場合、催告だけで足りるか・法的手続きの検討が必要かを確認したか
そもそもの支払期限の決め方や未入金時の段階別対応は請求書の支払期限ガイド、入金確認や支払通知の実務は支払通知書ガイドも合わせて確認すると、回収フロー全体を整理しやすくなります。
参考情報と更新方針
最終確認日: 2026-06-28
法定利率は変動し、時効の起算点・更新の要件は個別事情で異なります。督促状は文面テンプレートの提供にとどまり法的助言ではないため、金額が大きい場合や時効が近い場合は弁護士等にご相談ください。
参考にしている公的情報
- e-Gov法令検索 民法 - 法定利率・遅延損害金・時効の完成猶予(150条)等の原文
- e-Gov法令検索 - 法令の原文確認に利用できる公的データベース
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