海外からの報酬の受け取り方
送金経路・手数料・円換算の実務
この記事の要点
- 手取りを削るのは送金手数料より為替の上乗せ幅のほうが大きい
- 中継銀行の手数料は請求書で負担者を決めておかないと差し引かれる
- 売上は入金額ではなく計上日の相場で換算する。差額は為替差損益
1. 受け取り経路の選択肢
海外の取引先から報酬を受け取る方法は大きく 3 つに分かれます。どれを選ぶかで手取りと着金日数が変わります。
| 経路 | 着金までの目安 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 銀行の被仕向送金 | 2〜5 営業日 | 相手が大企業で、銀行送金しか受け付けない場合 |
| 送金サービスの現地口座受取 | 即日〜2 営業日 | 相手が現地の国内送金で払える場合。手数料を抑えやすい |
| 決済代行・プラットフォーム | サービスの支払サイクル次第 | 相手がカード決済を希望する場合や、継続課金の取引 |
銀行の被仕向送金は相手にとって手続きが分かりやすい反面、経路上の銀行が複数介在すると手数料が読めなくなります。送金サービスは相手が現地口座へ国内送金する形になるため、相手側の負担も軽くなります。
2. 手数料はどこで引かれるか
請求額と入金額の差は、複数の場所で発生します。表示された送金手数料だけを見ると、実際の目減りを読み違えます。
送金手数料
相手の銀行が請求
中継銀行手数料
経路の銀行が差し引く
受取手数料
自分の銀行が請求
為替の上乗せ
両替レートに含まれる
このうち金額が読みにくいのが中継銀行手数料です。送金の途中で差し引かれるため、着金するまで金額が分かりません。誰が負担するかは送金時の指定で決まります。
| 指定 | 意味 | 受け取る側への影響 |
|---|---|---|
| OUR | 送金人がすべて負担 | 請求額がそのまま着金する |
| SHA | 送金手数料は送金人、以降は受取人 | 中継銀行の分が差し引かれる |
| BEN | 受取人がすべて負担 | 差し引き後の金額が着金する |
何も決めないと SHA になることが多く、請求額より少ない金額が着金します。満額を受け取りたい場合は、契約や請求書で OUR を指定しておきます。
為替の上乗せ幅は手数料として表示されないことがあります。提示されたレートと、同時刻の市場の中値を比べると実質の負担が分かります。
3. 請求書に書く項目
国内の請求書の振込先欄だけでは海外から送金できません。海外送金に必要な項目を追加します。
| 項目 | 英語での呼び方 | 補足 |
|---|---|---|
| 銀行名 | Bank Name | 支店名(Branch)も併記する |
| SWIFT コード | SWIFT / BIC | 銀行を特定する 8 桁または 11 桁 |
| 口座番号 | Account Number | 欧州向けは IBAN を求められる |
| 口座名義 | Account Name | パスポートと同じ英字表記にする |
| 銀行住所 | Bank Address | 支店の所在地。求められることがある |
日本の銀行には IBAN がありません。欧州の取引先から求められた場合は、IBAN は日本では使われておらず SWIFT コードと口座番号で送金できると伝えます。
EchoInvoice の英語出力では振込先が Bank Account として出ます。SWIFT コードや手数料負担の指定は備考欄(Notes)に併記してください。
項目名の対訳は英語(英文)請求書テンプレートで確認できます。
4. 受け取った外貨の記帳
売上に計上する金額は、入金された円の金額ではありません。売上を計上する日の為替相場で換算した金額です。
原則は計上日の対顧客直物電信売買相場の仲値(TTM)で換算します。継続適用を条件に、売上を電信買相場(TTB)で換算する方法も認められています。
- 計上日の TTM
- 1 ドル = 150 円
- 売上(3,000 × 150)
- 450,000 円
- 実際の着金額
- 440,000 円
- 差額の内訳
- 手数料と為替の変動
- 売上は 450,000 円。差額は手数料と為替差損へ
- 差額 10,000 円
着金額を売上にしてしまうと、手数料が費用として残らず、為替の影響も見えなくなります。売上と差額は分けて記帳します。
消費税の扱いは海外の取引先への請求書と消費税で扱っています。不課税か免税かで仕入税額控除の可否が変わります。
5. 初回取引の確認事項
初めての相手との取引では、請求書を出す前に決めておく項目があります。後から変更すると着金が遅れます。
| 項目 | 決めておかないと起きること |
|---|---|
| 請求通貨 | 為替リスクをどちらが負うか曖昧になる |
| 手数料の負担者 | 請求額より少ない金額が着金する |
| 支払期限と支払日 | 海外は月末締め翌月払いとは限らない |
| 受け取り経路 | 相手が対応できない手段だと支払いが止まる |
支払サイトは国や業界で慣習が違います。日本の月末締め翌月末払いを前提にせず、期限を日付で明示してください。英文の請求書では Due Date に日付を入れます。
なお、日本の事業者が非居住者へ支払う側になる場合は、日本側で源泉徴収が必要になることがあります。受け取る立場と支払う立場で扱いが変わる点に注意してください。
一次情報の出典
参考情報と更新方針
最終確認日: 2026-09-16
送金経路ごとの手数料と着金日数は金融機関やサービスの改定で変わります。金額は契約前に必ず各社の最新の料金表で確認してください。
参考にしている公的情報
- 国税庁 タックスアンサー No.6325「外貨建取引の取扱い」 - 外貨建ての売上・仕入を円換算するときの為替相場の取り方
- 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問68 - 外貨建取引の適格請求書における税率ごとの消費税額等の記載方法
- 国税庁 タックスアンサー No.2884「非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率」 - 非居住者・外国法人への支払に源泉徴収が必要になる場合と税率
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